Wiresharkで学ぶパケット解析の基礎:ネットワークトラブルを自力で解決する技術

ネットワークのトラブルが発生した際に、原因を特定する最も強力なツールがWiresharkです。Wiresharkを使えば、リアルタイムでパケットをキャプチャし、HTTP、TCP、DNSなどのプロトコルを詳細に解析できます。この記事では、Wiresharkのインストールから基本的な解析手法、実践的なトラブルシューティングまで、段階的に学習できる内容を提供します。初心者でも理解できるように、具体的な操作手順とともに、ネットワークの仕組みを紐解いていきます。

目次

Wiresharkとは何か?基本機能と特徴
Wiresharkのインストールと初期設定
パケットキャプチャの基本操作
フィルタリング機能で効率的に解析する
主要プロトコルの解析方法
実践的なトラブルシューティング
応用テクニック:高度な解析手法
Wiresharkに関するよくある質問
まとめ:Wiresharkを使いこなすためのロードマップ

Wiresharkとは何か?基本機能と特徴

Wiresharkは、オープンソースのネットワークパケットアナライザです。1998年にGerald Combs氏によって開発され、現在では世界中のネットワークエンジニアやセキュリティ専門家に広く利用されています。Wiresharkの最大の特徴は、リアルタイムでネットワークトラフィックをキャプチャし、詳細に解析できる点です。具体的には、以下のような機能を提供しています。

  • リアルタイムキャプチャ:ネットワーク上を流れるパケットをリアルタイムで取得し、解析できます。
  • プロトコル解析:HTTP、TCP、UDP、DNS、DHCPなど、主要なプロトコルをサポートしています。
  • カラーコーディング:パケットの種類やステータスに応じて、視覚的に識別しやすいカラーコーディングが施されています。
  • フィルタリング機能:膨大なパケットデータから、特定の条件に合致するパケットのみを抽出できます。
  • 統計情報の取得:ネットワークの帯域幅、プロトコルの使用状況、通信相手のIPアドレスなど、詳細な統計情報を取得できます。
  • エクスポート機能:キャプチャしたデータをPCAP形式で保存し、後から再解析することが可能です。

Wiresharkは、Windows、macOS、Linuxなど、主要なOSに対応しており、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)で操作できるため、初心者でも扱いやすいツールです。また、コマンドライン版のTSharkも提供されており、サーバー環境などで利用することもできます。

Wiresharkの歴史と進化

Wiresharkの前身は、1990年代にEtherealという名前で開発されたツールです。2006年にEtherealの開発が停止し、その後継としてWiresharkが登場しました。Wiresharkは、Etherealのコードをベースにしつつ、機能の拡張やパフォーマンスの向上を図っています。現在では、ネットワーク解析ツールのデファクトスタンダードとして位置づけられています。

Wiresharkの最新バージョン(2024年6月現在)は、4.2.5です。このバージョンでは、以下のような新機能が追加されています。

  • 新しいプロトコルサポート:QUIC、MQTT、TLS 1.3など、最新のプロトコルに対応しました。
  • UIの改善:タブ表示の拡張や、カラーテーマの追加など、ユーザビリティが向上しています。
  • パフォーマンスの向上:大規模なキャプチャファイルの読み込み速度が向上しました。
  • セキュリティ機能の強化:暗号化されたトラフィックの解析機能が強化されています。

Wiresharkは、常に進化を続けており、ネットワーク技術の変化に対応しています。そのため、定期的にアップデートを行い、最新の機能を活用することが重要です。

Wiresharkのインストールと初期設定

Wiresharkを使用するには、まずインストールを行う必要があります。ここでは、Windows、macOS、Linux(Ubuntu)におけるインストール手順と、初期設定について解説します。

Windowsへのインストール

Windows環境にWiresharkをインストールする手順は以下の通りです。

  1. 公式サイトからインストーラをダウンロードWireshark公式ダウンロードページにアクセスし、最新バージョンのインストーラをダウンロードします。
  2. インストーラを実行:ダウンロードしたインストーラ(例:Wireshark-4.2.5-x64.exe)を実行します。
  3. インストールオプションの選択:以下のオプションを選択します。
    • 「WinPcap」のインストール:ネットワークパケットのキャプチャに必要なライブラリです。必ずチェックを入れてください。
    • 「USO Core」のインストール:Windows Update用のサービスです。任意で選択します。
    • 「USBPcap」のインストール:USBトラフィックのキャプチャに必要なライブラリです。任意で選択します。
  4. インストールの完了:インストールが完了したら、デスクトップに作成されたショートカットからWiresharkを起動します。

注意事項:Windows環境でWiresharkを使用する場合、管理者権限が必要です。そのため、インストーラを実行する際には、管理者権限で実行してください。

macOSへのインストール

macOS環境にWiresharkをインストールする手順は以下の通りです。

  1. Homebrewを使用したインストール:macOSでは、Homebrewを使用して簡単にインストールできます。ターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。
    brew install --cask wireshark
  2. GUIの起動:インストールが完了したら、以下のコマンドでWiresharkを起動します。
    open -a Wireshark
  3. ライセンス許諾:初回起動時に、ライセンス許諾画面が表示されるので、同意します。

注意事項:macOSでは、ネットワークパケットのキャプチャに管理者権限が必要です。そのため、Wiresharkを起動する際には、パスワードの入力が求められることがあります。

Linux(Ubuntu)へのインストール

Ubuntu環境にWiresharkをインストールする手順は以下の通りです。

  1. リポジトリの更新:ターミナルを開き、以下のコマンドを実行してリポジトリを更新します。
    sudo apt update
  2. Wiresharkのインストール:以下のコマンドを実行して、Wiresharkをインストールします。
    sudo apt install wireshark
  3. 管理者権限の設定:Wiresharkを使用するには、管理者権限が必要です。以下のコマンドを実行して、wiresharkグループにユーザーを追加します。
    sudo usermod -aG wireshark $USER
  4. 再起動:設定を反映させるために、システムを再起動します。
    sudo reboot
  5. Wiresharkの起動:再起動後、以下のコマンドでWiresharkを起動します。
    wireshark

注意事項:Ubuntu環境では、ネットワークパケットのキャプチャに管理者権限が必要です。そのため、Wiresharkを起動する際には、sudoコマンドを使用するか、wiresharkグループに所属している必要があります。

初期設定と日本語化

Wiresharkを初めて起動すると、以下のような初期設定を行うことができます。

  • 言語設定:Wiresharkは多言語に対応しており、日本語にも対応しています。以下の手順で日本語化できます。
    1. 「Edit」メニューから「Preferences」を選択します。
    2. 「User Interface」タブを選択します。
    3. 「Language」ドロップダウンメニューから「Japanese」を選択します。
    4. 「OK」をクリックして設定を保存します。
  • フォント設定:表示されるフォントを変更することができます。以下の手順で設定します。
    1. 「Edit」メニューから「Preferences」を選択します。
    2. 「User Interface」タブを選択します。
    3. 「Font」セクションで、フォントの種類とサイズを設定します。
    4. 「OK」をクリックして設定を保存します。
  • キャプチャオプションの設定:キャプチャを行う際のオプションを設定します。以下の手順で設定します。
    1. 「Capture」メニューから「Options」を選択します。
    2. 「Capture Filter」に、キャプチャするトラフィックの条件を入力します(例:port 80)。
    3. 「Buffer Size」を設定して、キャプチャするデータ量を調整します。
    4. 「OK」をクリックして設定を保存します。

これらの初期設定を行うことで、Wiresharkをより快適に使用することができます。

パケットキャプチャの基本操作

Wiresharkを使用してネットワークトラフィックをキャプチャするには、以下の手順を実行します。ここでは、基本的なキャプチャ操作と、キャプチャしたデータの保存方法について解説します。

キャプチャの開始と停止

Wiresharkを起動すると、以下のような画面が表示されます。

Wireshark起動画面

この画面では、利用可能なネットワークインターフェース(NIC)が一覧表示されています。キャプチャを開始するには、以下の手順を実行します。

  1. インターフェースの選択:キャプチャを行うネットワークインターフェースを選択します。通常、有線LAN(eth0、en0)や無線LAN(wlan0)などが表示されます。自宅のネットワークであれば、通常「Wi-Fi」や「Ethernet」といった名前のインターフェースを選択します。
  2. キャプチャの開始:選択したインターフェースの横にある青い矢印(キャプチャボタン)をクリックします。または、ダブルクリックすることでもキャプチャを開始できます。
  3. キャプチャの停止:キャプチャを停止するには、赤い四角形のボタン(停止ボタン)をクリックします。または、メニューバーの「Capture」から「Stop」を選択します。

キャプチャを開始すると、リアルタイムでパケットが取得され、画面上に表示されます。パケットは、以下のようなカラムで構成されています。

宛先のIPアドレスまたはMACアドレスです。

カラム名説明
No.パケットの通し番号です。
Timeパケットがキャプチャされた時刻です。
Source送信元のIPアドレスまたはMACアドレスです。
Destination
Protocol使用されているプロトコル(例:TCP、UDP、HTTP)です。
Lengthパケットのサイズ(バイト)です。
Infoパケットの詳細情報(例:HTTP GETリクエスト、TCP SYN)です。

キャプチャしたデータの保存

キャプチャしたデータは、PCAP形式で保存することができます。保存することで、後から再解析することが可能になります。保存手順は以下の通りです。

  1. キャプチャの停止:キャプチャを停止します。
  2. 保存ダイアログの表示:メニューバーの「File」から「Save As」を選択します。
  3. 保存場所とファイル名の指定:保存する場所とファイル名を指定します。デフォルトの拡張子は「.pcap」または「.pcapng」です。
  4. 保存の実行:「保存」ボタンをクリックして、データを保存します。

注意事項:PCAPファイルは、非常にサイズが大きくなることがあります。そのため、必要なデータのみを保存するか、定期的に古いデータを削除することをおすすめします。

キャプチャオプションの詳細設定

Wiresharkでは、キャプチャを行う際に、以下のような詳細なオプションを設定することができます。

オプション説明
Capture Filterキャプチャするトラフィックをフィルタリングする条件を指定します(例:port 80)。
Buffer Sizeキャプチャするデータのバッファサイズを指定します。デフォルトは2MBです。
Promiscuous Mode有効にすると、同一ネットワークセグメント内のすべてのトラフィックをキャプチャします。無効にすると、自分のMACアドレス宛てのトラフィックのみキャプチャします。
Limit each packet toキャプチャするパケットの最大サイズを指定します。デフォルトは65535バイトです。
Resolve MAC addresses有効にすると、MACアドレスをベンダー名(例:Intel Corp.)に置き換えて表示します。

これらのオプションを適切に設定することで、効率的なキャプチャを行うことができます。

フィルタリング機能で効率的に解析する

Wiresharkの最大の特徴の一つが、フィルタリング機能です。膨大なパケットデータから、特定の条件に合致するパケットのみを抽出することで、解析の効率を大幅に向上させることができます。ここでは、Wiresharkのフィルタリング機能について、基本的な使い方から応用テクニックまで解説します。

キャプチャフィルタと表示フィルタの違い

Wiresharkには、以下の2種類のフィルタが用意されています。

フィルタタイプ説明使用場所
キャプチャフィルタキャプチャ時に、特定の条件に合致するパケットのみを取得します。キャプチャ開始前の「Capture Options」画面
表示フィルタキャプチャ後に、特定の条件に合致するパケットのみを表示します。メイン画面の「Filter」ボックス

キャプチャフィルタは、キャプチャ時に適用されるため、不要なパケットを取得しないことで、パフォーマンスの向上やストレージの節約につながります。一方、表示フィルタは、キャプチャ後に適用されるため、キャプチャしたデータから特定のパケットを抽出する際に使用します。

基本的な表示フィルタの使い方

表示フィルタは、メイン画面の「Filter」ボックスに入力します。以下に、基本的な表示フィルタの例を示します。

フィルタ式説明
tcpTCPプロトコルのパケットのみを表示します。
udpUDPプロトコルのパケットのみを表示します。
httpHTTPプロトコルのパケットのみを表示します。
dnsDNSプロトコルのパケットのみを表示します。
ip.addr == 192.168.1.1送信元または宛先のIPアドレスが192.168.1.1のパケットのみを表示します。
tcp.port == 80送信元または宛先のTCPポートが80のパケットのみを表示します。
http.requestHTTPリクエストのパケットのみを表示します。
http.responseHTTPレスポンスのパケットのみを表示します。

表示フィルタは、複数の条件を組み合わせることもできます。例えば、以下のようなフィルタ式を使用することができます。

  • tcp.port == 80 and http:TCPポート80でHTTPプロトコルのパケットのみを表示します。
  • ip.addr == 192.168.1.1 and tcp.port == 443:IPアドレス192.168.1.1でTCPポート443のパケットのみを表示します。
  • !(arp or icmp):ARPまたはICMPプロトコル以外のパケットを表示します。

キャプチャフィルタの使い方

キャプチャフィルタは、キャプチャを開始する前に適用します。キャプチャフィルタは、以下のような形式で入力します。

フィルタ式説明
tcp port 80TCPポート80のトラフィックのみをキャプチャします。
host 192.168.1.1IPアドレス192.168.1.1との通信のみをキャプチャします。
net 192.168.1.0/24192.168.1.0/24のネットワーク内のトラフィックのみをキャプチャします。
portrange 1-1024ポート番号1から1024までのトラフィックのみをキャプチャします。
ether host 00:11:22:33:44:55MACアドレス00:11:22:33:44:55との通信のみをキャプチャします。

キャプチャフィルタを使用することで、不要なトラフィックをキャプチャせずに、効率的に解析を行うことができます。

高度なフィルタリングテクニック

Wiresharkのフィルタリング機能は、非常に柔軟で、高度な条件を指定することができます。以下に、高度なフィルタリングテクニックをいくつか紹介します。

1. 論理演算子の活用

Wiresharkのフィルタリングでは、以下の論理演算子を使用することができます。

演算子説明
and両方の条件を満たすパケットを表示します。
orいずれかの条件を満たすパケットを表示します。
not条件を満たさないパケットを表示します。
xorいずれか一方の条件のみを満たすパケットを表示します。

例えば、以下のようなフィルタ式を使用することができます。

  • tcp.port == 80 and http:TCPポート80でHTTPプロトコルのパケットのみを表示します。
  • ip.addr == 192.168.1.1 or ip.addr == 192.168.1.2:IPアドレス192.168.1.1または192.168.1.2のパケットを表示します。
  • not arp:ARPプロトコル以外のパケットを表示します。
  • tcp.port == 80 xor tcp.port == 443:TCPポート80または443のいずれかのパケットを表示します。

2. 比較演算子の活用

Wiresharkのフィルタリングでは、以下の比較演算子を使用することができます。

演算子説明
==等しい
!=等しくない
>より大きい
<より小さい
>=以上
<=以下

例えば、以下のようなフィルタ式を使用することができます。

  • frame.len > 1000:パケットサイズが1000バイトより大きいパケットを表示します。
  • tcp.analysis.ack_rtt > 0.1:ACK応答までの往復時間が0.1秒より大きいTCPパケットを表示します。
  • http.response.code >= 400:HTTPレスポンスコードが400以上(エラー)のパケットを表示します。

3. 正規表現の活用

Wiresharkのフィルタリングでは、正規表現を使用することもできます。正規表現を使用することで、より柔軟な条件指定が可能になります。正規表現を使用するには、以下のような構文を使用します。

  • matches:正規表現にマッチする文字列を含むパケットを表示します。
  • !matches:正規表現にマッチしない文字列を含むパケットを表示します。

例えば、以下のようなフィルタ式を使用することができます。

  • http.host matches "example\.com":HTTPホスト名が「example.com」にマッチするパケットを表示します。
  • dns.qry.name matches "[a-z]+\.example\.com":DNSクエリ名が「*.example.com」にマッチするパケットを表示します。
  • !http.user_agent matches "Mozilla/5\.0":ユーザーエージェントが「Mozilla/5.0」にマッチしないパケットを表示します。

注意事項:正規表現を使用する際には、特殊文字(例:., *, +)をエスケープする必要があります。エスケープにはバックスラッシュ(\)を使用します。

4. カスタムフィルタの保存と再利用

Wiresharkでは、頻繁に使用するフィルタ式を保存し、再利用することができます。以下の手順で、カスタムフィルタを保存します。

  1. フィルタ式の入力:メイン画面の「Filter」ボックスに、保存したいフィルタ式を入力します。
  2. フィルタ名の設定:フィルタ式の横にある「Filter Expression」ボタンをクリックし、「Save this filter」を選択します。
  3. フィルタ名の入力:保存するフィルタ名を入力し、「OK」をクリックします。
  4. フィルタの再利用:保存したフィルタは、「Filter」ボックスのドロップダウンメニューから選択することで、再利用できます。

このように、カスタムフィルタを保存することで、効率的に解析を行うことができます。

主要プロトコルの解析方法

Wiresharkを使用してネットワークトラフィックを解析する際には、主要なプロトコルの仕組みを理解しておくことが重要です。ここでは、HTTP、TCP、UDP、DNS、DHCPなどの主要なプロトコルについて、Wiresharkを使用した解析方法を解説します。

HTTPプロトコルの解析

HTTP(HyperText Transfer Protocol)は、WebブラウザとWebサーバー間でデータを送受信するためのプロトコルです。Wiresharkを使用してHTTPトラフィックを解析することで、Webページの読み込み状況や、リクエスト・レスポンスの詳細を確認することができます。

HTTPリクエストとレスポンスの構造

HTTPのリクエストとレスポンスは、以下のような構造になっています。

HTTPリクエスト

GET /index.html HTTP/1.1
Host: www.example.com
User-Agent: Mozilla/5.0
Accept: text/html

HTTPレスポンス

HTTP/1.1 200 OK
Content-Type: text/html
Content-Length: 1234

<html>
  <body>
    <h1>Hello, World!</h1>
  </body>
</html>

WiresharkでHTTPトラフィックを解析する際には、以下のようなポイントに注目します。

実践的なトラブルシューティング

ネットワークトラブルの多くは、パケット解析を通じて原因を特定できることが少なくありません。例えば、特定のサービスへの接続ができない場合、まずはそのサービスの宛先IPアドレスやポート番号を確認し、パケットキャプチャで通信が行われているかどうかを検証します。Wiresharkでは「フィルタ」機能を活用することで、目的の通信のみを抽出し、問題の有無を効率的に調査できます。

また、ネットワーク遅延やパケットロスが発生している際には、ICMPやTCPの応答時間を分析することが有効です。例えば、pingコマンドによる応答遅延とWiresharkでのパケット到達時間を比較することで、ネットワーク機器の負荷や帯域不足などのボトルネックを推測できます。こうした分析では、時系列でパケットの送受信状況を可視化する「タイムスタンプ」機能が役立ちます。

トラブルシューティングの際には、以下の手順を参考にするとよいでしょう。

  • 問題が発生している時間帯や対象のデバイスを特定する

応用テクニック:高度な解析手法

パケット解析の基礎を習得した後は、より高度な手法を活用することで、ネットワークの問題解決やセキュリティの強化につなげられます。例えば、時系列分析では、特定のパケットが送受信されるタイミングや頻度を詳細に追跡し、通信の遅延やボトルネックの原因を特定します。Wiresharkの「タイムスタンプ」機能を活用することで、パケットの到着間隔やジッタ(遅延変動)を可視化でき、ネットワークのパフォーマンスを定量的に評価することが可能です。

また、プロトコル階層の深堀りも重要なテクニックです。単にパケットをキャプチャするだけでなく、各レイヤ(物理層からアプリケーション層まで)のプロトコルを分解し、通信の正当性や不正な振る舞いを検出します。例えば、HTTP/2やQUICなどの新しいプロトコルでは、従来のTCP/UDPに比べて通信効率が向上していますが、その構造を理解していないと解析が困難になる場合があります。Wiresharkの「プロトコル階層」ビューを使用すれば、各レイヤのパケット数やデータ量を一覧でき、異常なトラフィックパターンを早期に発見する手助けとなります。

さらに、カスタムフィルタや Lua スクリプトの活用も、解析の効率を飛躍的に高める手段です。Wiresharkの標準フィルタだけでは対応しきれない複雑な条件(例:特定のIPアドレス範囲やポート番号の組み合わせ)を抽出する際には、wireshark -X lua_script:custom_filter.lua のように Lua スクリプトを用いて独自の解析ロジックを実装できます。これにより、繰り返し行う定型作業を自動化したり、特定の脅威シグネチャに基づく検知を行ったりすることが可能です。ただし、スクリプトの実行にはセキュリティリスクも伴うため、信頼できるソースから入手したものを使用することが推奨されます。

  • 実践的な応用例:企業ネットワークにおける不正な通信の検知。特定のポートやプロトコルを悪用した攻撃パターンを Wireshark のフィルタ機能で絞り込み、侵入検知システム(IDS)と連携させることで、リアルタイムでの脅威対応が可能になります。

Wiresharkに関するよくある質問

Wiresharkを使いはじめた方や、パケット解析に関する疑問をお持ちの方から寄せられる質問をまとめました。基本的な使い方からトラブルシューティングまで、実務で役立つ回答を紹介します。

Q1. Wiresharkでキャプチャしたパケットを解析する際の基本的な手順は?

Wiresharkでパケットを解析する際は、まずキャプチャ対象のネットワークインタフェースを選択します。次に、キャプチャを開始し、任意のタイミングで停止します。解析では、プロトコル階層やフローごとのパケット一覧を確認し、特定の条件でフィルタリングします。例えば、HTTP通信のみを表示したい場合は「http」と入力します。また、パケットの詳細情報からエラーや異常な挙動を探ることで、ネットワークの問題を特定できます。キャプチャ中は不要なトラフィックを最小限に抑え、解析対象の通信のみを選択的にキャプチャすることが重要です。

Q2. Wiresharkでキャプチャしたパケットを保存する方法は?

Wiresharkでキャプチャしたパケットは、ファイル形式で保存できます。キャプチャを停止した後、「ファイル」メニューから「名前を付けて保存」を選択し、保存先とファイル名を指定します。保存形式は「.pcap」または「.pcapng」が一般的で、互換性を考慮すると「.pcapng」が推奨されます。保存したファイルは他の解析ツールやチームメンバーと共有でき、再度Wiresharkで開いて詳細な解析を行うことが可能です。また、キャプチャ中に自動保存する設定もあり、定期的にバックアップを取ることでデータ損失を防げます。

Q3. WiresharkでSSL/TLS暗号化された通信を解析する方法は?

WiresharkでSSL/TLS暗号化された通信を解析するには、事前に暗号化鍵を取得する必要があります。具体的には、サーバーとクライアント間で交換されるセッション鍵をキャプチャするか、またはクライアント側で鍵をエクスポートしてWiresharkに読み込ませます。例えば、Webブラウザの場合は「SSLKEYLOGFILE」という環境変数を設定し、鍵を記録します。Wiresharkでは「編集」→「設定」→「Protocols」→「TLS」で鍵ファイルのパスを指定します。これにより、暗号化された通信でも平文に近い状態で内容を確認できますが、プライバシーやセキュリティに配慮し、適切な権限と同意の下で実施してください。

Q4. Wiresharkを使用する際の注意点やセキュリティリスクは?

Wiresharkを使用する際は、キャプチャ対象のネットワークや通信の内容に注意が必要です。特に、第三者の通信を無断でキャプチャするとプライバシー侵害や法的問題に発展する可能性があります。また、キャプチャしたデータには機密情報が含まれることがあるため、保存や共有の際は暗号化やアクセス制限を徹底しましょう。Wireshark自体は管理者権限で動作することが多いため、不用意に実行するとシステムに悪影響を与える可能性もあります。信頼できるネットワーク環境で、必要最小限の権限で使用することが重要です。トラブルが発生した場合は、公式ドキュメントやコミュニティのサポートを活用してください。

まとめ:Wiresharkを使いこなすためのロードマップ

Wiresharkを活用したパケット解析は、ネットワークのトラブルシューティングやセキュリティ監視、性能最適化など幅広い用途で役立ちます。本記事では、基本的なキャプチャ方法からフィルタリング、プロトコル解析、そして実践的なトラブルシューティングまで、段階的なアプローチを紹介しました。特に、キャプチャしたパケットを効果的に分析するためには、適切なフィルタの活用が不可欠です。また、HTTPやTCPなどの主要なプロトコルを理解することで、より深いインサイトを得られるようになります。

今後は、実際のネットワーク環境でWiresharkを使用し、さまざまなシナリオに対応した解析スキルを磨いていくことが重要です。定期的な練習を通じて、キャプチャしたデータから異常やボトルネックを迅速に特定できるようになると、ネットワーク運用の信頼性向上につながります。Wiresharkは無償で利用できる強力なツールですが、その真価を発揮するには実践的な経験と知識の蓄積が必要です。

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